『本にだって雄と雌があります』小田雅久仁

  • 著: 小田 雅久仁
  • 販売元/出版社: 新潮社
  • 発売日: 2012/10/22

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去年の年末に評判になった本なので今更感もあるが、電子書籍化されたので読んでみた。
本にも雄と雌があって雄と雌の本を隣り合わせにくっつけて置くと子供を産んで、要するにいつの間にか本がどんどんと増えていく。
本が好きな人間であれば、特にいつ読むことができるのかわからないくせに本を買って、そのくせ増えた本を処分することなどしないタイプの人間であれば、次々と増えていく本の山に怒りの声を上げる家族に対して、ついつい、こんなことを言ってみたくなる。つまり、自分が買っているから増えていくのではなく、いつの間にか自分の知らないうちに勝手に本が増えているのだと。
もちろん、怒り心頭状態の人間にこんなことを実際にいけしゃあしゃあと言ってみたところで火に油を注ぐ行為なので本当に言うわけにはいかないのだが、ようするにこの本はそんな内容なのだと思っていたら、全く違った。
いつかはちゃんとした物語が始まるのだろうと読み進めていっても、とにかく物語は始まらない。どことなく森見登美彦の作風にも似ているけれども森見登美彦の方は物語があるのだが、こちらは無い。
無いというか、そもそも、この物語は深井一族の物語であって、僕が最初に期待していたような物語ではないのだ。
いつまでたっても僕が期待する物語にはならない代わりにやたらと愉快な物語が延々と続く。

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