本好きのためのミステリというのはわりとあるのだが、僕は全く読んでいない。
本が嫌いというわけではなく好きなほうなんだけれども、だからといって本好きのためのミステリを読まなければいけないという理由があるわけでもなく、というか、なんとなくその手の本を読んだら負けだという天邪鬼な気持ちが働いているせいもある。
そんなわけだから、『ビブリア古書堂の事件手帖』も読もうとはしなかった。ただ、ライトノベルなので気軽に読むことができそうでもあり、だったらちょっとは読んでもいいかなという気持ちも働いたのは確かだ。
で、運が悪いことに電子書籍化されてしまった。電子書籍であれば本の置き場に苦労する必要もないし、紙の書籍に関する物語を電子書籍で読むというある種の背徳感というか、天邪鬼な気持ちが僕の背中を後押ししてしまったので読んで見ることにした。
適度に古書に関する蘊蓄があって、適度にミステリになっていて、そして短編でありながら連作短編となっていて、最終話で第一話から貼られていた伏線が回収される。
さらに、適度に爽やかで後味がよく、それでいて適度にどす黒い悪意があって、確かにこれは評判になるというもよく分かる……のだが、この適度な部分が物足りないのも確かで、もっとマニアックだったらもっと楽しめただろう。
惜しいのはやはりスピン(栞紐)が付いているのは新潮文庫だけという部分で、新潮文庫以外にスピンが付いている星海社文庫が出たのが2011年1月、この本が出たのが2011年3月、この物語の時代設定が2011年以前であるとすればなんの問題もないのだが、作者にしてみれば悔しかっただろうなあと思うのだ。
そういえば、東京創元推理文庫も1980年くらいまでは初版本にスピンがついていたことがあった。
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