題名と本そのものの分厚さでちょっとだけ気になっていた本なんだけれども、電子書籍化されていたので読んでみた。
電子書籍版では紙の書籍にあった写真がすべて省かれているのだが、そもそも僕は力道山は知っていても木村政彦は知らなかったので、変な先入観なしにまっさらな気持ちで読むことができたので変えってこの方がよかったと思う。
では逆に、木村政彦という人物のことを全く知らないどころか柔道に関してもほとんど興味のない人間が読んでみて面白かったのかというと、最初にこの本を書店で見た時に感じたとおり、面白かったのだ。確かに、この本は評判になるだけのことはあったといえる。
二段組で700ページ、電子書籍になるとSony Readerで一番小さい文字で表示しても1200ページを超える分量から想像できるだけあって、話の流れは多岐にわたり、単純に木村政彦と力道山の因縁話だけで終始するわけではなく、時代的に前後しながら、昭和という時代のある一面を浮き彫りにしていく内容になっている。
僕は力道山という人物にそれほど悪い印象を持っていなかったのだけれども、この本を読んでそれが逆転し、悪いイメージを持つようになった。しかし必ずしも力道山が悪人だったというわけでもなく、力道山自身も時代の犠牲者の一人でもあったということもこの本では浮き彫りにしているのである。
描く対象が木村政彦だけでなく、彼が関わった人物全てに対して詳細にわたって描かれていて、それが多岐に渡り過ぎているせいか、これだけの紙面の分量であってもそれらすべてが描ききれないことで構成上、破綻しているように思える部分もあるけれども、圧倒的な勢いのある本だった。
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