たんぽぽ娘 旧訳と改訳

コバルト文庫版の『たんぽぽ娘』を持っている身としては、今回、改訳決定版として出た「たんぽぽ娘」と旧訳版「たんぽぽ娘」とでどこがどう違っているのか調べてみたくなった。これが長編だったらそんな気などまったく起こらなかっただろうけれども、短編で、ページ数にして22ページほどの分量だったので、なんとかなるかと思ったのだ。
しかしこういう場合、電子書籍だったならばもう少し楽になっただっただろうけれども、仕方がない。
上段が改訳で、下段が旧訳。間違いや漏れがあったらコメントしてくださるとありがたいです。


1ページ 1行目
丘の上に
丘に立って
エドナ
女流詩人のエドナ
ミレー
ミレイ
した。
した(ミレイは、ロマンチックで反逆的な詩を書いた。一八九二-一九五〇)。
1ページ 2行目
おそらく
たぶん、
午後の日ざしを浴びるうしろ姿と、風におどるたんぽぽ色の髪のせいもあった
たんぽぽ色の髪を風におどらせ、午後の日ざしを浴びて立つ女のうしろ姿だったせいもある
1ページ 3行目
あるいは
もしかしたらそれは
える古風
える、古風
1ページ 4行目
のか。
かもしれない。
マークは
彼は
1ページ 5行目
なんとも
それは
というのは、
なぜなら
1ページ 7行目
切らし
切らして
おいて立ち止まった
おいたところで立ち止まった
1ページ 8行目
がいる
のいる
気づかせる
悟らせる
だろう。
だろう、とマークは迷った。
1ページ 9行目
つかぬまま
つかないままに、彼は
1ページ 10行目
のか、
のか
1ページ 11行目
こちらを
彼を
1ページ 12行目
ひどく
痛いほど
1ページ 13行目
と心に
と彼は心に
なか

2ページ 1行目
いま

はるか下界に去り
自分のうしろ、見おろすはるか下界にあり
ほんのりと薄黄色に燃えて、秋の訪れをつげていた
秋の訪れを告げる淡い色に染まってほのかに燃えていた
2ページ 2行目
向こう
むこう
配した
そなえた
2ページ 3行目
夏休みの
夏季休暇のうちの
2ページ 4行目
に興じ
を楽しみ
2ページ 5行目
まえ

2ページ 6行目
つづけ
続け
三日め
三日目
なか

2ページ 8行目
囲む
形づくる
2ページ 9行目
面長の顔は
顔は卵型で
かがやいて
輝いて
いたたまれないほどの
息苦しいような
2ページ 10行目
をおぼえ
が呼びさまされ
伸びて
上がって
なか

ふれ
触れ
2ページ 11行目
手が腰から
腰から手が
てもいない
もしなかった
2ページ 12行目
(自分はもう四十四だ)気持ちがふしぎに揺れた。(
わたにはもう四十四だ。軽い驚きをおぼえながら彼は思った。
だろう。
じゃないか。わたしは
2ページ 13行目
いうんだ?)
しているんだ?  改訳での括弧内の文章は旧訳では傍点付き
彼は声をかけた
声にだしてたずねた
2ページ 14行目
遠くに目を向けると
ふりかえると
3ページ 1行目
見下ろ
見おろ
3ページ 2行目
って、
って
3ページ 4行目
とぶつかり
にぶつかり
彼方では
はるか彼方には、
ごつごつした
でこぼこの
3ページ 5行目
が靄のなかでかすみ、現実というよりは中世の夢の城のように延び広がったたたずまいを見せている
。しかし、それもあいだにかかる靄のおかげで左右にのびひろがった中世の城のように見え、現実というよりどこか夢の国を思わせる
3ページ 6行目
から?
からですか?
3ページ 7行目
いま

3ページ 8行目

未来
3ページ 9行目
いま

3ページ 11行目
か。
かな?

都市
でしょうな
だろうな
3ページ 12行目
ええ、それはもう
それはもちろん
メガロポリス
巨大都市(メガロポリス) ルビ
なってしまって、
なって、
3ページ 13行目
もと

サトウカエデ
さとうかえで 傍点付き
なか

3ページ 14行目
ニセ
にせ 傍点付き
3ページ 16行目
ショッピング・プラザ
プラザ
3ページ 17行目
頭痛薬
アスピリン
3ページ 18行目
ブナ

4ページ 1行目
ドレスショップ
ドレス・ショップ
4ページ 3行目
無作法
不作法
4ページ 5行目
限界
限り
4ページ 6行目
おなじ
同じ
4ページ 7行目
タイムマシン
タイム・マシン  以下、タイムマシンはすべてタイム・マシン
4ページ 14行目
きのう
きのう 傍点付き
おなじ
同じ
おなじ
同じ
4ページ 18行目
まえ

5ページ 4行目
いま

5ページ 5行目
つけ加え、
付け加え
5ページ 6行目
それなら
それなら、
5ページ 7行目
ひたむきに見つめるまなざし
食いいるように彼を見る眼差し
そうだね
そうだとも
5ページ 8行目
でしょうな
だろうな
5ページ 9行目
まじめな顔で
重々しく
すがすがしい空き地に立ちたいと思っている人たちは
すばらしい自然を求めている人たちには
5ページ 10行目
ここに来たいんじゃ
ほしいんじゃ
すがすがしい空き地
自然
5ページ 13行目
ませんな
ない
ければ
ければいけないな
5ページ 14行目
お住まい
おすまい
5ページ 15行目
泊まっています
いるんです
5ページ 16行目
きてしまって
きて
こっちも休暇を
ぼくも
5ページ 17行目
まあ、
ま、
いますよ
いるというところかな
6ページ 2行目
似合いの
似つかわしい
6ページ 3行目
似合い
似つかわしい
6ページ 4行目
といいはりたい
ふりをしたい
6ページ 5行目
やさしい
優しい
6ページ 6行目
わき
湧き
6ページ 7行目
学生
学校
6ページ 8行目
勉強中なんです」
勉強中」
6ページ 9行目
まえ

6ページ 10行目
書きとめていく
ノートに書きとめる
6ページ 12行目
がね。出会ったのもそういう関係なんだ
だが。それで出会ったんだ
6ページ 13行目
のか彼は
のか?彼は
6ページ 15行目
だったね
だったよ
手放さねばならないときは
手離すのは
別の
手離すと同時に、別の
7ページ 1行目
手放したとはいえないか
これは手離すとはいえないだろうね
7ページ 2行目
そうでしょうね
そうね
7ページ 3行目
いけませんから
ならないから
7ページ 6行目
ますから
るんですもの
7ページ 8行目
いま

7ページ 12行目
法科
法律科
7ページ 13行目
法律事務所を開き
事務所を持ち
7ページ 14行目
いい
言い
糊(のり) ルビ
糊(こ)  ルビ
7ページ 15行目
はじまり
始まり
ひとつ
一つ
7ページ 16行目
くなり
いものとなり
7ページ 17行目
果たす
する
7ページ 18行目
に加えて
のほかに
を抱えた
ができた
8ページ 1行目
以来彼は
以来、彼は、
のぞいて
除いて
8ページ 2行目
選んだ
選ぶ
三人
水いらず
8ページ 3行目
水いらずで湖畔
二人で湖のほとり
暮らすのを
暮らす
8ページ 4行目
いって
言って
8ページ 5行目
消えない
消されない
8ページ 10行目
松林のなか
パインの林の中
小道
小径
8ページ 11行目
小屋の裏手には砂利を敷いた車回しが
砂利を敷いた車回しが小屋の裏手に
8ページ 12行目
つっきれば
抜ければ
8ページ 13行目
に復帰できる
へ復帰することができる
8ページ 14行目
かんたん
簡単
はい

間をおいて物置小屋から
物置小屋から間をおいて
8ページ 15行目
その音
それ
8ページ 16行目
の耳に容赦なくはいってくる
が容赦なく聞かされる
そろえた
揃えた
8ページ 17行目
抜き出す
一冊抜きだす
下ろし
おろし
「昼下がりの丘にて」
『昼下がりの丘にて』
載っている
ある
9ページ 1行目
脚の
美しい脚の
9ページ 2行目
もと

9ページ 3行目
造り
作り
出て
出ると、
9ページ 6行目
ひとつひとつ
一つ一つ
9ページ 13行目
すこしのあいだ感情の平衡が崩れ
感情の平衡が少しのあいだ崩れ
9ページ 14行目
もと

いま

9ページ 16行目
につまった

なか

9ページ 17行目
すべりこむ
もぐりこむ
落ちる
おちる
10ページ 4行目
ている
ていた
10ページ 5行目
もと

なか

10ページ 6行目
あご 傍点付き
あご
10ページ 7行目
いった
言った
るのに
までに
10ページ 11行目
すわり心地のよさそうな
坐れそうな
岩を
それを
代わり
かわり
10ページ 12行目
なか

10ページ 16行目
引退した
引退している
11ページ 1行目
マーク

11ページ 9行目
置いてけ
追いてけ
11ページ 10行目
タイムトラベル
タイム・トラベル
歴史研究
歴史調査隊
12ページ 2行目
のほうから
から
12ページ 6行目
暮らし
生活
12ページ 8行目
わけ (改行)
わけ (改行なし)
12ページ 10行目
もし
つまり、もし
12ページ 11行目
かかわり
関わり
その人
その人間
なってしまう
なる
つまり、もともとその人は過去の一部として存在していたから
その理由は、父がいま言ったような経験を自分自身でしているから
12ページ 14行目
いま

12ページ 17行目
かがやいた
輝いた
13ページ 2行目
めたよ
めた
13ページ 3行目
まなざし
眼差し
13ページ 5行目
つづく
続く
ことば
言葉
疑い
疑問
13ページ 6行目
なかった
ない
13ページ 7行目
……。
……。 改行
13ページ 8行目
かんする
関する
熱っぽい
熱を帯びた
13ページ 15行目
この高ぶった
そのときの高ぶった
13ページ 16行目
きっている
きっていた
14ページ 2行目
村へ
例の小さな村へ
自分あて
彼宛
いないか
いるか
14ページ 3行目
なかった
ない
いま

14ページ 6行目
しわだらけ
しわくちゃ
もと

14ページ 12行目
あふれて
溢れて
14ページ 13行目
思いは
思いは、
14ページ 18行目
そこには人の姿
人影
15ページ 2行目
腰を下ろして
腰かけて
15ページ 4行目
ようやく
待つのをようやく
15ページ 13行目
理由は、
理由は
15ページ 14行目
ものいいたげ
もの言いたげ
15ページ 16行目
顔を押し
押し
たせた
たせている
死にました
死んだの
15ページ 18行目
ひとつ
一つ
16ページ 1行目
いましたのも
今もまた、
16ページ 2行目
意味のキスではなかった
意味でのキスはなかった
ただそれだけ
それだけ
16ページ 5行目
90
九十
16ページ 6行目
いわなかった
言わなかった
16ページ 11行目
わたし
わたし、
子ども
子供
16ページ 15行目
見るまに
たちまち
気持ち
つもり
16ページ 16行目
子ども
こども
16ページ 17行目
いわないで
言わないで
17ページ 4行目
かがやか
輝か
いんです
いの
入れかえた
入れ替えた
17ページ 5行目
わたしたちの
わたしたちの--わたしの
17ページ 10行目
いって
言って
17ページ 13行目
なか

ふるえ
震え
17ページ 15行目
ちがいなかった
ちがいない
18ページ 4行目
位置をたしかめた
確かめた
ふるえて
震えて
18ページ 7行目
小道
小径
18ページ 8行目
はいる
入る
あて

18ページ 9行目
しわだらけ
しわくちゃ
18ページ 10行目
やがて
それから
18ページ 12行目
首を
かぶりを
18ページ 15行目
こない
来ない
18ページ 17行目
時は
になると
いつも村にいた
彼は村を訪れた
19ページ 2行目
市内に
市内へ
対しては、
対しては
いままでどおり
今までどおり、
19ページ 7行目
いま

19ページ 8行目
青さを増し、澄みわたっている。
青く澄みわたっている。
19ページ 11行目
はいった
入った
19ページ 13行目
家にいるのは
家にいたのは
見て、
見て
19ページ 13行目
ジグソーパズル
ジグソー・パズル
20ページ 1行目
下げ
さげ
開けた
あけた
20ページ 2行目
あると、
あると
20ページ 4行目
手がとまった
手をとめた
20ページ 7行目
開け
あけ
ふるえる
震える
広げる
ひろげる
ひっそり
それはひっそり
20ページ 8行目
ドレスは部屋のなか
部屋の中
下がった
さがった
もと

20ページ 10行目
おさめると、
おさめ、
ケースは
ケースは、
20ページ 12行目
もと

いまにも
今蜂も
20ページ 13行目
下り
下りて
20ページ 14行目
はいる
入る
20ページ 15行目
下ろす
おろす
小道
小径
はいる
入る
20ページ 16行目
ジュリアンか
ジュリーアン
20ページ 17行目
おそらく、そうだ
おそらく
かならず
必ず
21ページ 1行目
手を
手から
21ページ 2行目
遠い昔
遠いむかし
21ページ 5行目
二十代で同じ
二十代のあのころと同じ
21ページ 13行目
玄関に出ると
ホールに入ると、
なか

21ページ 14行目
小道
小径
下った
くだった
21ページ 15行目
だったが
だが
涙も
涙の雫も
21ページ 16行目

女性
21ページ 17行目
なか

22ページ 3行目
トレンチコート
トレンチ・コート
もと

22ページ 4行目
いまでは
今や
22ページ 5行目
顔立ちは
顔立ちはいまだに
22ページ 8行目
いま

22ページ 9行目
見まもる
見守る
なか

22ページ 10行目
ところへ
ところに
伸ばす
のばす
22ページ 12行目
なか

こうしてざっと比較して見ても、改訳決定版といっても間違いはない変更になっているんじゃないかと思う。
あと、比較して初めて気がついたんだけれども、旧訳では「今蜂も」という言葉が使われている箇所があった。改訳では「いまにも」となっているのだが、浅学にして、この「今蜂も」という言葉が実際に存在している言葉なのかそれとも誤植なのかわからなかった。

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