『夏色ジャンクション』福田栄一

著:　福田栄一
販売元／出版社:　実業之日本社
発売日:　2013/6/5

福田栄一の小説はとにかく安心して読むことができる。
ここでいう安心というのは、読んでがっかりさせられることが無いという意味で、逆に言えば、特別抜きでたものがないという部分もあるのだけれども、でも、そういうたぐいの物語を読みたいのであれば他の作者の本を読めばいいわけで、福田栄一の物語を読むのであれば、この本も必ず満足することができるはずだ。
今回はミステリ的な要素が殆ど無いのだけれども、次にどんなことが起こるのか予測不能という点ではミステリと同じドキドキ感を味わう事ができるが、その一方で話が進むにつれて、どういう展開になっていくのかは予測がつく。矛盾しているような表現なのだが、行き当たりばったり的なロードノベルなので、次にどこへ行くのかはわからない、しかし、主人公たちの心境の変化はどういった方向へと向かうのかは予測がつくというか、読み手が期待する方向へと進むので予測がつくのだ。しかし予測がつくからといってつまらないのかというとそんなことはなく、読み手が期待する方向へと主人公たちが変化していくので、読んでいて心地良いのだ。
この読んでいて心地良いというのが大切な点で、この心地よさを味わうために僕は福田栄一の小説を読んでいる。