日常の謎系のミステリというと、殺人や暴力といったものが登場しないので、ほのぼのとしたミステリという印象を持ってしまいがちだ。
しかし、殺人が起こる話でも、コージー・ミステリと呼ばれるミステリであれば、ほのぼのとした雰囲気のまま読むことができるわけで、ほのぼのとしたミステリを読みたいのであれば日常の謎系のミステリにこだわる必要もない。
そもそも、日常であっても人の心のなかには悪意が存在する。その悪意が殺人にまで発展すれば、一般的な殺人事件を扱ったミステリになり、その二歩ぐらい手前で終われば、十分に日常の謎系のミステリになるわけで、そうなったばあい、謎解きが終わってもほのぼのとした気持ちで本を置くことなどできやしないのだ。
『七つの海を照らす星』も日常の謎系のミステリの部類に含まれるのだけれども、殺人事件こそ扱われないが、そこでは児童養護施設という、普通の人の生活する場所から少し離れた場所における日常の世界が描かれて、そしてその場所の特異性故に、人の悪意や、悪意でないにせよ、人を傷つけるような事柄が起きる。もちろん、そんな負の面だけではない。
人の心の持ついい面も謎として描かれる。
「真実っていうのは人を幸せにするものだ。」という作中の人物のセリフがそれを物語っている。
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