予想外のところで完結してしまった。
半自伝的漫画ということだったので、まだまだ続くと思っていたのだが、吉田聡はただ単純に自伝を描きたかったわけではなく、自伝という自分自身を素材の一つにして、それとは違う物語を描いていたというわけだった。
それはつまるところ、人生の成功者の物語ではなく、成功しなくっても頑張り続けてきた人の物語であり、応援歌であり、だから、半自伝といいながらも、今まで吉田聡が描いてきた漫画とそれほど大きく変わっていたわけではないのだった。
しかし、読み終えてみるともう少し別の描き方があっても良かったんじゃないかと思うくらいに、爽快感が無いのがもったいない気もする。もっとも、だからこそ、主題が生きてくるわけではなるのだが、吉田聡の漫画に対してある種の爽快感を求めている部分もあるので、読み終えてみるとこれはいったいどうしたものかと思ってしまう面もある。
なんとなく漫画家になってみようと思った主人公は、それほど売れていない漫画家に弟子入りしたものの、その師匠である漫画家も途中で漫画家を廃業してしまう。そしてその師匠に持ち込み先として推薦された出版社でも、担当してくれた編集者は途中で会社を辞めてしまい、さらには掲載が決まった雑誌も休刊、ようするに廃刊が決定してしまう。主人公の動機にももちろん不純な要素はあるけれどもそれでも主人公なりに少しずつ成長していっているなかで、そんな精一杯の努力と頑張りさえも軽く踏みにじってしまう社会を描いているのだから爽快感などゼロに等しい。
しかしねえ、だからこそ、僕はこの漫画が好きなのだ。
コメント