宮内悠介の小説は、『NOVA』シリーズに収録されていた<スペース金融道>シリーズと、『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』に収録された「超動く家にて」しか読んでいなかったので、どちらかといえばお笑い系の作風の人だと思い込んでいた面がある。
もちろん宮内悠介が「盤上の夜」で第1回創元SF短編賞山田正紀賞受賞してデビューしたことは知っていて、「盤上の夜」が、なんとなくだけれどもお笑い系の話ではないことも理解していた。だからその短編を収録した短篇集『盤上の夜』は、僕が知っている宮内悠介とは異なる宮内悠介の小説だということも想像がついていた。
はずなのに実際に読んでみると、そのギャップの大きさにとまどってしまった。
やはりその衝撃の一つは、「盤上の夜」での主人公である女流棋士の生い立ちだろう。生まれつき四肢が無いというわけではなく、異国にて拉致され、そして慰み者にされるために四肢を切断されたという経歴の持ち主だ。
多分、生まれつき四肢の無い人間であるという設定でも物語としては成立するだろうけれども、あえて悲惨な境遇に陥らせるのはやはり、囲碁、将棋、チェッカー、麻雀といったゲームを土台としてSFとしてのアイデアを結晶化させるためには、そのゲームのプレイヤーは通常の思考とは異なる異質な思考が必要なためなのだろう。
その異質な思考を単純に狂気と呼ぶのは簡単なのだが、ただ、僕はどうしてもそれを狂気という言葉で安易に語りたくはない。たぶん、ここで描かれているのは異質な思考であって狂気ではないのだ。
『盤上の夜』宮内悠介

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