あえてジャンル分けする必要もないと思うのだけれども、強いていえばやはり寓話ミステリとしかいいようがないかもしれない。
しかし、ミステリといってもそれほど謎解きが重視されるたぐいの物語ではなく、来年という年を迎える前に人類は滅びてしまうかもしれないという雰囲気を漂わせた終末感で満ちた世界のお話だ。
人語をしゃべる猿という生き物が登場する時点ですでに時代的には近未来の話ではあるが、そういった時代背景や世界の設定そのものにはそれほど意味はない。寓話としての物語としての要素であり、むしろそれらはすべて主人公の女性と人語をしゃべる猿との物語に奉仕する要素であり、それゆえに、二人の物語は静謐で、そして残酷な結末へと向かっていく。
全部で三章にわかれた物語の一章は主人公と猿とのかかわり合いの物語に終始し、物語が急展開をするのは二章に入ってからなのだが、一気にそれまでの曖昧にほのめかされたいろいろな部分の謎解きのようなものが行われ、そして主人公は残酷な真実を知ることとなる。
ただ、そこで明らかにされる真実そのものにはなんの不満もないのだが、その真実を知ることが主人公にとって残酷なことなのかというと甚だ疑問で、幼い頃に施設に預けられた主人公がそこまでショックを受けるものだろうかと思ってしまうのだ。
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