見事なまでにアメコミナイズされた009達だった。
それゆえにか、浦沢直樹が鉄腕アトムの「地上最大のロボット」をリメイクした時に、鉄腕アトムと言われなければ鉄腕アトムとは思わないほどかけ離れているのに、それでも鉄腕アトムというキャラクターが持っている、アトムを構成する記号的な要素を残したまま、これが鉄腕アトムだと言われたら納得してしまうだけの説得力を持ったアトムを描いて見せた時ほどの衝撃は受けなかったのが残念だ。
むしろ、神山健治監督のアニメ『009 RE:CYBORG』におけるキャラクターデザインのほうが日本人好みだろう。そういう点でみると、石ノ森章太郎の009を神山健治がリメイクして、そのリメイクされたキャラクターをアメコミに適用させたという風に捉えると、わりと納得がいくし共通点も多い。
一般的な漫画ならば、表紙をめくると次のページはタイトルページであることが多いのに、この本は、表紙をめくるといきなり話が始まるのに戸惑った。値段が値段で、アメコミとしてはかなり安いので、無駄な部分は省いたといえばそうなのかもしれない。
そこからも想像がつくかもしれないが、わずか百ページほどの紙面のなかで、物語は原作の『誕生編』『暗殺者編』そして間を飛ばして『地下帝国ヨミ編』付近までを一気に駆け抜ける。
僕は、『地下帝国ヨミ編』あたりまでならばおおよそ原作の内容を把握しているので問題はないのだが、009の物語をまったく読んだことのない人がこの本を読んだとしたらどう思っただろうか。
そういうわけで物語としてはかなり省略されているのだが、基本的な流れは意外なことに原作に忠実で、さらに細かな設定は現代に適応できるようにアレンジがされている。003には新たな能力が追加され、それが物語の中で生きているし、007の変身シーンは紙面が少ない故にか、かっこ良く描かれている。
そういう点では、物語で見せるというよりも、絵で見せる仕上がりになっているといえよう。あくまで勧善懲悪の物語なのだ。
僕は『サイボーグ009』の名台詞は『ミュートス・サイボーグ編』での「あとは勇気だけだ」だと思っているので、今回『ミュートス・サイボーグ編』がまるっきり省略されてしまったのは残念なのだが、今回『地下帝国ヨミ編』付近まで描かれているものの、あくまでそれは、009の屈指の名シーンである大気圏突入シーンを最大の山場にしようとしたためであって、今回ブラックゴーストは滅んではいないし、地下帝国の物語も登場しない。
なので、『ミュートス・サイボーグ編』に関してはいずれ続きが描かれるかもしれないという期待を持っておこう。
で、この本の結末を先に書いてしまったが、そう、この本の山場は002と009の大気圏突入シーンだ。この場面を見ることができただけで、今までのすべての不満など消し飛んでしまう。
「ジョー、きみはどこにおちたい?」
ただ、残念なことに紙面の無さが原因だったのだろうか、その後のシーンは原作の域に達してはいない。一応、流れ星となった二人を見て祈る姉弟が登場するけれどもこの場面はおまけ程度であまり生きていない。もう一ページ余分にあればと思った。
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