ようやく中間地点の第三巻。
冒頭の山田正紀の「交差点の恋人」は、題名からは想像もつかない内容だ。
しかしやっていることは他人の夢のなかに入り込んで、トラウマを解消させ治療するという、それほど新味なものではないのに、この語り口といい、アプローチの仕方といい、やたらとかっこいい。
これが失敗すると『神狩り2』になるんだろうけれども、これから約30年後に「雲のなかの悪魔」を書くくらいなので、いい意味でやっぱりいつまでたっても山田正紀は山田正紀のままでいてくれる。
川又千秋の「火星甲殻団」は予想外になんだかかっこいい話だった。長編版も読みたくなるのだが、電子書籍で復刊とかされないものかな。
個人的に一番良かったのは中井紀夫の「見果てぬ風」で、既読だったはずだけれどもほとんど内容を忘れてしまっていたので、また楽しむことができた。
中井紀夫のベストといえば「見果てぬ風」よりは「山の上の交響楽」の方を選んでしまうけれども、その差というのは、「山の上の交響楽」は永遠に続くのに対して「見果てぬ風」は永遠に続くだろうという結果でありながらも、物語として一応の一区切りをつけてしまっている部分だね。
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