『駅にいた蛸』眉村卓

  • 著: 眉村 卓
  • 販売元/出版社: 双葉社
  • 発売日: 2013/5/16

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『駅と、その町』に続いて双葉文庫から、『駅にいた蛸』が出た。
『駅と、その町』は短篇集でありながら、登場人物が相互に関わりあいを持った連作短編集であったのに対して、こちらは純粋な短篇集。題名に「駅」という言葉があるけれども、まったく関係はない。
しかしながら、出版芸術社から出ていた<眉村卓コレクション>シリーズの三冊に比べるとひどく地味だ。この後、『職場、好きですか?』が同じく双葉文庫から出ることを思えば、どこかに眉村卓コレクションといった言葉を入れておいてもいいんじゃないかとも思うのだが、すごいな、双葉社って。
さて、地味と書いてしまったけれども、つまらないのかといえばそんなことはない。ひょっとしたら今回の文庫化は眉村卓ファンだけに向けてのものかもしれないのでそれだったならば、それでかまわないのだが、このおもしろさというのはどうも無条件におすすめできる面白さとは違うので困ってしまう。
それぞれの短編の中で使われるアイデアは眉村卓独自のものだというわけではなく、他の作家でも同じようなものを考え、作品に仕上げることはできるだろうが、肝心な点は、そのアイデアの発展のさせ方と使い方だ。もはや、眉村卓にしかできないであろう境地にいたっている。

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