なんとも言えない不思議な題名に惹かれて読んでみた。もちろん題名に半魚人と付いているからといって本当に半魚人が登場するような話ではないし、そういう話を期待したわけでもない。
小学五年生の男の子が主人公の話なのだが、だからといってこの物語が小学生を対象とした物語であるわけでもない。だからといって、小学生が読むような話ではないかといえばそんなこともなく、小学生が読んでも構わない話なんだけど、実際に小学生が読んだら面食らうだろうなあ。というわけで、この物語は小学五年生の男の子の物語でそして彼の生活の範囲内、つまり家と学校と、そして同級生達とのかかわり合いの物語でありながらも、大人のための物語なのだ。
では、小学五年生の男の子の日常生活を描いた物語が大人にとって面白いのかというと、これが面白い。大人の、たとえ子供の心を残したままであっても、すでに大人になりきってしまった人間では気が付かないような子供の視点と、子供の視点でありながらも主人公のどこか子供離れした考え方と、大人でも持ち合わせている、いろいろと理性ではわかっていながらも、感情的には割り切れないままの気持ちとかそういったものが読んでいてひしひしと迫ってくる。
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