前巻からさらに進化している。
絵もうまくなっているけれども、話の幅が広がっているのだ。
竜が登場したり、人魚が登場したり、はたまた狼男の物語だったりと扱っているのもはファンタジーの世界の存在なのだが、それを現代社会の中で当たり前のように存在させ、そしてそこから予想もしない方向へと読者を導いていく。
その一方で、現代ではない話もあり、中世のヨーロッパらしき時代、はたまた江戸時代も登場するけれども、背景となる時代が変わろうとも、そこれ描かれる物語はぶれない。
どの話も甲乙つけがたく、ハズレがない。しかし、強いて言えばすべてを描いてしまうとその絵が命を持ってしまうことから片目を描かず、未完成のままですましてしまう孤高の天才絵師の落ちぶれた晩年を描いた「金なし白祿」が良い。天才でありながらも、年老い落ちぶれてしまい、そして偏屈な老人となってしまう。しかし、作者はそんな彼の物語に思いもよらない彩りを加えるのだ。
最後に収められた「犬谷家の人々」だけが異彩を放っていて、何かしらの超能力を持つ大谷家のドタバタミステリコメディで、最後にこんな話を持ってくるところが心憎いというか、この人の引き出しにはまだまだいろんなものが詰まっていそうな予感を感じさせる。
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