ある理由から刑事になった男が関わる七つの事件、七つの短編からなる短篇集。事件を解決する刑事が同じというだけで、それぞれの事件はつながりはないのだが、どの事件も重苦しい事件ばかりだ。
特に、主人公が刑事に転職するきっかけとなった出来事そのものが辛い出来事でなおかつそのことを主人公がずっと引きずったままであるということがそれぞれ事件の背景の一部としてのしかかっているからなおさらだ。
しかしだからといって読むのが嫌になるほどではないのは主人公がそんな過去を引きずりながらも事件の犯人や被害者にたいして向けるまなざしのやわらかさがあるからで、ここまでできた人間なんかいないよと言ってしまえばそれでおしまいになってしまうけれども、重苦しい事件の中にも一抹の希望を与える存在としてこの主人公がやはり必要なのだ。
ミステリとしてはどの話も最後に一捻りしてあって、意外な真相という点でも楽しむことはできるのだが、なかでも「オムライス」という話の真相は衝撃的だった。
いやはや、単純な動機の悲しい事件だと思っていたらとんでもない真実が隠されていて、こんな話も書くことができるのかと思った。
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