『かつて描かれたことのない境地』残雪

  • 訳: 近藤 直子
  • 著: 残 雪
  • 販売元/出版社: 平凡社
  • 発売日: 2013/7/19

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先に、吉田知子の作品を読んだせいか、最初に残雪の小説を読んだ時とでだいぶ受け止め方が違ってきたのだが、この本を読んで、余計に残雪の書く小説がわからなくなった感じだ。
もともと残雪の書く物語というのはよくわからない世界で、わかるのは目の前にある手の届く範囲内の僅かな世界だけであり、そこから先の手が届かない世界はなにも見えないという部分があったのだが、残雪の世界というのはそういう手が届かない先がなにもわからない世界というだけではなかったのだ。
河出書房新社から出ていた池澤夏樹による個人編集の世界文学全集『暗夜/戦争の悲しみ』に収録されていた六編の短編から受けた印象だけでは残雪の世界はほんの僅かな世界でしかなかったというわけでもある。
多分、何かを基準にしなければ残雪の小説を説明できないというのは僕の残雪の小説に対する理解がまだまだ足りていないということかもしれないが、他者の作品と比較をすることで自分自身の立ち位置を明確にしておかないと残雪の世界に翻弄されるだけのままだというのもまた事実なのだ。残雪の小説を翻訳したいと思っている人たちがいて、盛んに翻訳し続ける理由もなんとなくわかる気がする。ある意味残雪の小説は読んだ人間を虜にする麻薬なのだ。
それにしても一体、中国の人たちはこの残雪の小説をどのように捉えているのだろうか。

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