『異形の白昼 恐怖小説集』筒井康隆編

  • 編: 筒井 康隆
  • 販売元/出版社: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/9/10

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『60年代日本SFベスト集成』が出たのでこれはあわよくば、残りのシリーズも復刊されるのかなと期待していたら、こっちのほうが復刊された。
この本が文庫として現役だったころ、僕は恐怖物はあまり好みではなかったので素通りしてしまっていたが、今は多少は好みも変わり、というか収録作の幾つかは読んでみたい気にさせるものだったので読んでみた。
編者である筒井康隆自身による解説はしっかりと収録されているうえに東雅夫による解説も入ってお得感は満載。
星新一の「さまよう犬」、遠藤周作の「蜘蛛」、小松左京の「くだんのはは」、筒井康隆の「母子像」、曽野綾子の「長い暗い冬」が既読。僕としては遠藤周作の「蜘蛛」が既読というあたりが珍しいことなのだが、「針」という短編が読みたかったので遠藤周作の『怪奇小説集』を買って読んだのだ。しかし『第二怪奇小説集』まで読んだのかは記憶に無い。
宇野鴻一郎とか、笹沢左保、吉行淳之介、戸川昌子といった守備範囲外の作家の作品を読むことができるというのがこういうアンソロジーを読む楽しみの一つで、今回もさすがに筒井康隆の選んだ作品だけあって堪能することができた。
サブタイトルにあるとおり、恐怖小説であって、ホラーでもサスペンスでもはたまたオカルトでもなく幻想でもない。ここで描かれているのはあくまで恐怖であって、しかもそれが必ずしも恐怖を描くことを主眼として描かれた作品ばかりというわけでもなく、結果として読み手がそこに書かれた物語の中になにかしらの恐ろしさを感じ取るものであって、特に最後に収録された戸川昌子の「緋の堕胎」などはこれを選んだ筒井康隆の彗眼のようなものさえ感じさせる怖い話だった。

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