翻訳されるというアナウンスがあってから随分と待たされた。これが国書刊行会か東京創元社から出版されるというのであれば待たされる覚悟とひょっとしたら永久に出ないかもしれないという諦めもつくけれども、河出書房新社から出るとなると早い段階で出る可能性が高いからだ。もっとも奇想コレクションのヤングの例もあるので確実とはいえないけれども、あれは編者が伊藤典夫だったせいだろう。
あまりにも待ち過ぎたので、手に入れたことで安心してしまって読まずにすましてしまうという僕の悪い癖があやうく出そうになったのだが、それを押し込んでなんとか読み終えた。
あまり関係ないところでロバート・F・ヤングを引き合いに出したのだが、恋愛SFという点でみるとわりとヤングとコーニイは近い存在なのかもしれない。もっともそれだけで単純に比較してしまうのは乱暴すぎるのだが、しかし、主人公がわりとあっさりとヒロインに恋をしてしまってそれが成就してしまうあたり、そして彼らのイチャつきぶりが微笑ましいを通り越して好きにしてくれと言いたくなるレベルだったりする点、ヤングよりもコーニイの方がましとみるか、それともヤングの方がましとみるか、どっちもどっちの気もする。ただ、コーニイの方がそのことに対して自覚的で、主人公達の恋愛も物語の結末における衝撃度を高めるための一つの要素としてしか描いていないような気もする。
前作でのロリンという生物の行動の謎や、今回新たに追加された主人公たちの能力の理由、とあらゆる要素に対しての合理的な説明がなされるのは驚いたというかちょっと綺麗にまとめ過ぎなんじゃないかという気もするくらいなのだが、必ずしもハッピーエンドというわけでもなく、主人公たちにとっては衝撃的な謎解きという点で、待たされた分だけの満足度はあった。
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