『今夜の私は危険よ』コーネル・ウールリッチ

  • 訳: 高橋 豊
  • 著: コーネル・ウールリッチ
  • 販売元/出版社: 早川書房
  • 発売日: 1983/11

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昔、コーネル・ウールリッチにハマったことがあって、それは『幻の女』を読んだ時のことであり、それからしばらくはハヤカワ・ミステリ文庫、今だとハヤカワ文庫HMというのが正しいのだけれども、ここから出ているいくつかの長編、それから創元推理文庫から出ている長編と五冊の短篇集を読みあさったけれども、その時点で傑作扱いのものしか読まなかったので、ハヤカワ・ミステリ文庫の何冊かの長編は読まないままだった。もちろん、ポケミスから出ているものも同様だ。
けれども、『黒い天使』が文庫化されたのを皮切りに再び僕の中でウールリッチに対する熱が上がってそれから、今度は一気に読むことはせず、気が向いた時に未読のものを読み始めるようになった。
ウールリッチの小説の中で、傑作と呼ばれているものは既に読み終えているので、残りのものはそれなりのレベルだということはわかっており、あまり過度な期待はしないようにしているのだけれども、やっぱりどこかで期待をしてしまう。
今回手にしたのは、ウールリッチの短編の中でも幻想・怪奇系の話を集めたものだ。
もともと、ウールリッチの小説におけるサスペンスの元となる謎の部分において科学では割り切れない、オカルト的、もしくは超常現象的な要素があった。もっとも結末としては超常現象ではなくウールリッチ流のではあるが合理的な解釈がされていた。しかし、ここに収められた作品は、超常現象的な要素に謎の部分を委ねきった作品ばかりで、それでいて面白さは変わりがなく、結局、ウールリッチの面白さってのは結果よりも過程の部分なんだよなあと思う。
中でも「ジェーン・ブラウンの死体」はユニークな話で、なんと死体を蘇生させる話なのだ。ウールリッチがこんなアイデアを使って物語を書いたというのも驚きなのだが、しかし、話の展開はいつものウールリッチで、主人公たちが破滅に向かって一直線という展開をする。
巻末にF・M・ネヴィンズ・Jrによるウールリッチの小伝があって、これがなかなかの力作なのだが、よくよく考えて見ればF・M・ネヴィンズ・Jrって、『コーネル・ウールリッチの生涯』を書いた人だからこの程度のものなら書けて当たり前だろう。『コーネル・ウールリッチの生涯』は値段が値段だったのでまだ読んでいないのだが、これも読まないといけないよなあ。

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