短篇集なんだけれども物語性というのに乏しく、最初、読み始めた時にはあまり内容が頭のなかに入ってこず、これは森見登美彦の小説の中で初めてのハズレっぽい感じだなと思ったのだが、そのまま読み続けていくとそんなことはなかった。
それぞれの話は相互には関連性はないのだけれども、過去の森見登美彦の小説の登場人物が登場したりして、結局は森見登美彦ワールドとでもいうべき世界の物語でそれが四畳半というキーワードでつながっていて、関連性がないようにみえてじつは密接に関連しあっている。
中でも「蝸牛の角」は傑作。四畳半という世界を描いたマジックリアリズムであり、場面転換の描写が面白い。
物語性が一番あるのは「大日本凡人會」。一種の超能力物でもあり、というか最初は登場人物達が勝手に自分の不甲斐なさを棚上げするための妄言のように見えながらも、実のところ彼らの妄言は妄言ではなく本当に彼らが持っている特殊能力で、能力者対能力者の超能力対決という展開になるのだけれども、彼らの能力というのがこれまた微妙な能力で例えていえば、普通に想像するところの超能力が一軒家レベルとすれば彼らの超能力はまさしく四畳半レベルなのだ。
しかし、まあ森見登美彦ファンのためだけの小説でもあるので万人にはあまりおすすめはできない。
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