『古い腕時計 きのう逢えたら…』蘇部健一

  • 著: 蘇部 健一
  • 販売元/出版社: 徳間書店
  • 発売日: 2013/10/4

Amazon

蘇部健一というと、デビュー作である『六枚のとんかつ』を笠井潔に単なるゴミであると酷評されたのが印象深く、まあそこまで言わなくてもいいじゃないかと変えって弁護したくなる気持ちが湧いてくる不思議な作家なのだが、『六枚のとんかつ』はシリーズ化されるし、近年はタイムトラベルを扱った話に何かしらの鉱脈を見出したようでその方面の話を書きまくっていて、SF好きにも気になる作家にもなっているんだけれども、このタイムトラベル系の話も微妙な話で、ようするにあまりひねりがなく、直球の話が多い。なおかつ、ハッピーエンドになるわけでなくバッドエンド系の話で、まあそのあたりが時々、気が向いた時に読むとちょうどいい話なのだが、今回も、一日だけ時間を巻き戻してやり直すことができる腕時計を手に入れた人々の話を集めた連作短編集で、どの話も救いがあまり無い。結末の部分にイラストを持ってきて、文章ではなく絵で結末を描いているのは『六枚のとんかつ』からのこの人のやり方なんだけれども、まあこれはこれで悪くはないんだが、もう少しなんとかならないものかなあと思ってしまう。
けど、いつかは化けるんじゃないかとついつい手にとってしまうのだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました