一冊の本を読み終えた後、次に何を読もうか考えたときにすぐに読みたい本が思い浮かぶと気分が良くなる。
たいていは、読み終えた本の余韻を引きずっているので次の本にとりかかろうとすると、その余韻を消してからでないと次の本がすんなり頭に入ってこなくなるからだ。
『あまからカルテット』を読み終えた後、次は何にしようかと積読状態の本の山を目にした時に、この本が目についた。多分この本ならば『あまからカルテット』の余韻を引きずったままでも大丈夫なはずだと思ったのだ。
北村薫の本を読むのは久しい。数カ月前に『北村薫と日常の謎』を読んだけれども短編が一遍収録されてはいたけれどもこれはガイドブックで、小説ではない。
そんなわけで久しぶりに読んだ北村薫の文章にまず驚いた。もともと端正な文章を書く人だったけれども、端正なうえにこんなにも軽快で洒落た文章を書くとは思いもよらなかったのだ。ああ、これは読んでいて楽しい文章なのだ。全12編の連作短編、どの話にもお酒が絡んでくるというか登場人物たちは飲みまくっている。それも楽しい酒をだ。もっとも悲しい酒もちょっとあるけれども、出版社を舞台にしているあたりも本が好きなに人にとっては興味深い内容で、こういう楽しいお酒を飲んでいた時期があったなあと昔を懐かしんだ。
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