エラリイ・クイーンはそれほど読んでいない。
国名シリーズだと『ローマ帽子の秘密』『ギリシャ棺の謎』『エジプト十字架の秘密』だけで、本来ならば国名シリーズ全部を読んでおくべきなのだろうけれど、とりあえずはクイーンのデビュー作とこの二冊を読んでおけばいいかなという気持ちだった。ちなみに『ギリシャ棺の謎』だけ「謎」なのはこれだけ創元推理文庫版で残りがハヤカワ・ミステリ文庫で読んだからだ。この統一性のなさも僕の適当さを物語っているとも言えるけれど、地方に住んでいると、必ずしも欲しい本が手に入るとは限らないので、こうなってもしかたがないのだ。そんなわけなので、クイーンの名前もこの記事ではエラリーではなくエラリイと表記しておく。
最近になってクイーンの国名シリーズが角川文庫で新訳で出るようになったのだが、だからといって食指が動いたというわけでもなく、ある人のブログで『オランダ靴の謎』を読んだ記事が載っていて、この本も抑えておくべき一冊だったことに気付かされたのので読んでみた。
クイーンの小説を読むのは久しぶりだったので、こういう雰囲気の物語だったのかと新鮮な気持ちにもさせられる反面、法月綸太郎の小説とダブらせてしまったりもした。
たしかに、この小説を国名シリーズの中の傑作だという人がいるのもうなずける話で、それまでは『エジプト十字架の秘密』が一番の傑作だと思い込んでいたのだが、論理の端正さと、謎解き以外に余分なものが無いという点においてはこちらのほうが上回っているだろう。
消去法による推理の過程は読んでいてぞくぞくするほどで、物語の展開が地味な分、謎解きの部分がよりいっそう際立ってくるのだ。
いあや、これは残りのシリーズも読まないといけないよなあ。
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