『魔王殺しと偽りの勇者2』田代裕彦

  • 著: 田代裕彦
  • 販売元/出版社: エンターブレイン
  • 発売日: 2013/12/26

Amazon


前巻が四人の容疑者のうち二人を除外するまでの話だった。で、今回は残りの二人のうちどちらが魔王を倒した人物なのかを調べる展開となるはずだったが、前回の時に書いたように、順番に一人ずつ話を聞きに行って、魔王を倒した人物なのかどうかを推理するという形式を取った場合、三人目が違った場合、必然的に最後の人物が魔王を倒した人物となり、三人目に対する尋問が終了した時点で物語は終わってしまう。もちろん、実は第五の人物がいて、その人物が魔王を倒したのだったという展開もできないわけではないが、そんな展開には絶対しないだろうというのはこの作者の過去の作品から予測できるし、前巻の時点で第五の人物の存在は感じ取れないのであくまで魔王を倒した人物は四人の中の一人なのだ。
が、さすがに後編となる今回は少しひねりを入れてきて、新たな殺人は起こるは、予想外の人物が、ミステリとして反則にならないレベルで登場するわと、なかなか楽しませてくれる。
ただ、誰が魔王を倒したのかという魅力的な謎がひねりを加えたことで謎解きの焦点もずれ、真実を見つけ出すのではなく、いかに満足する答えを出すのかという点にスライドしてしまったのが残念で、個人的にはバークリーの『毒入りチョコレート事件』のような多重解決の面白さのほうに向かってくれていたら本格ミステリとしての傑作になっただろうと思ってしまう。
いや、この話はこの話で意外な真相という点では面白かったんだけれども、田代裕彦ならばこちらの想像の上をいくミステリをいつの日か書いてくれるんじゃないかと期待してしまうのだ。
しかし、本当に驚いたのは作者のあとがきで、前巻が売れなかったら、解決編であるこの本が出ない可能性があったということだった。売れなければ続きが出ないというのはやっぱり厳しい世界だなあ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました