まず、主人公である弁護士のキャラクター造形が強烈だ。
優秀だが金に汚い悪徳弁護士という設定はそれほど新味ではないし、どことなくブラック・ジャックの弁護士版、こちらはさすがに弁護士としての資格は持っているが、そんな雰囲気も匂わせている。
が、彼の過去がすさまじい。
酒鬼薔薇事件を彷彿させる少年犯罪の犯人という設定なのだ。
事件を起こし、そして逮捕され、少年院に入れられるのだが、はたして彼は矯正させられたのだろうか。物語の冒頭を読む限りではそんな気配すらさせない。さらに弁護士の資格を取るためには法律の知識だけが重要視され人格といったものは全く関係ないという現実が、彼を弁護士にさせたのである。
リーガル・サスペンスといった装いであり、実際のところ、有罪判決を受けた裁判をどのようにして無罪へと持っていくのかというところがこの本の面白さでもあるのだが、同時に、有罪判決を受けた人物が無罪であるのならば本当の犯人は誰なのかという謎が残る。
もちろん主人公はそのあたりも含めて一気に謎を解き明かす、はずだと思ったらそうでもなく、予想外のところから事件の真相が暴かれ、そして同時にタイトルにある「贖罪」の意味もわかる。主人公である御子柴弁護士の物語はシリーズ化され二作目も出た。こちらも読むのが楽しみな一冊だ。
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