『正弦曲線』堀江敏幸

  • 正弦曲線
  • 著: 堀江 敏幸
  • 販売元/出版社: 中央公論新社
  • 発売日: 2013/11/22

Amazon


堀江敏幸のような文章を書くことができたのであれば、僕は悪魔に魂を売っても構わないと思っている。
この本はエッセイなのだが、エッセイでありながらもごくふつうのエッセイとは一線を画している。
「サイン・コサイン・タンジェント」
タイトルにあるとおり正弦曲線から始まって、様々な話題へと移っていくのだが、どの話も正弦曲線のように一定のリズム、大きなうねりを描くかのようなテンポとそれに呼応する話題の変化でもって構成されている。
一つの話は文庫にして数ページという長さで、本全体でも文庫で200ページ程度の薄さだ。にもかかわらず密度が濃いというよりも文章の端正さと、うまさ故に、読むのに恐ろしく時間がかかる。もっとも時間がかかるのは、いつまでも読み続けていたいという心理的な要因も多く、一気に読み進めるのではなく一日に数編ずつ読み進めていく、といった読み方がちょうどいい読み方なんじゃないかと思ってしまうし事実そうなのだ。
著者と年代が近いせいか、話題に上がる内容に思わず懐かしさを覚えるものもあった。特にアルミの製氷皿は、そんなものがあったということすら忘れていたのだけれども、確かに僕が子供の頃はこの製氷皿を使っていた記憶があり、無くしてしまった記憶がよみがえるという面白い体験をさせてもらった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました