『終末の鳥人間』が面白かったので、読んでみた。
太陽おばば、という題名から受ける印象は明るい物語というものだったが、実際はそんなに明るくないどころか時として重苦しく、そして身につつまされる内容の物語だった。『終末の鳥人間』と同様、一筋縄ではいかない話を書く作家だ。
主人公はバツイチの女性ライター。彼女は不妊が原因で離婚となり、そしてゲームのノベライズ小説などの文筆で生計を立てている。物語はそんなか彼女が引っ越してきたアパートの隣の住人に高枝切りバサミで洗濯物のブラジャーを真っ二つにされるところから始まる。彼女のブラジャーを真っ二つにした老女がこの物語のもう一人の主人公だ。
不妊が原因で離婚したという主人公の設定からして既に明るい設定ではないし、子供を産めない彼女にとって自分の老後は自分で見る必要がありそして自分の身一つで生きていかなければいけない。一方、もう一人の主人公である耶知子婆さんは脳天気で、お気楽な性格でありながらも彼女も一人暮らし。娘がいるようなのだが仲が悪く、孫が時折遊びに来るぐらいだ。そして耶知子婆さんにはなにやら不思議なチカラがあるらしいことが少しずつわかってくる。
全五話の連作短編だが、それぞれの話の中で描かれるというか主人公と耶知子婆さんが係る出来事は、死と老いに関わる出来事で、やがて僕自身にも同じように降りかかってくる老いと死というこの二つの出来事を自分に照らしあわせて読んでしまうと、身につつまされ、切なく、そして悲しくなってきてしまう。
そういう点ではまったく僕の好みのお話ではなかったのだが、読んで損したというわけではない。
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