作者が十九世紀のロンドンに関わる自分の好きな物を詰め込んで、やりたい放題やってみたという感じで、注ぎ込まれたネタを拾い集めるだけでもお腹がいっぱいになりそうで、それでいて、そんなことを気にせずに読んでもわりと楽しむことができる物語になっていて、その点ではシェリー・プリーストの『ボーンシェイカー』よりは気軽に楽しめた話だった。
そもそも、三部作の一作目となっていながらもこの巻だけで物語としてはまとまっていて、物語そのものも、殺されてしまった彼女を生きかえらせるために主人公が右往左往するというシンプルなもので、そのシンプルな物語にいろいろとゴテゴテとネタが投入されている。逆に言えば次の巻への訴求力が乏しいという部分もあるのだけれども、訳者あとがきによれば、次の巻では三銃士の敵役がサイボーグとなって登場するなんて書いてあって、これはこれで面白そうな話だ。
物語としてはシンプルと書いたけれども、実際にはブックマンに関わる問題においていろいろと面白いネタが投入されていて、そのあたりが続く次の物語でどこまで発展されていくのかという興味もあるし、多数の人物が入り乱れて登場するわりにはページ数がページ数だけあって、それぞれの人物があまり活躍しないまま物語が終わってしまっている面もあって、ホームズはともかくとしてネモ船長とかジュール・ヴェルヌあたりはもう少し活躍させてほしい思いもある。あとモリアティがどうなったのかも気になるしね。
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