全五話の短篇集。
「風を放つ」は精霊を閉じ込めた瓶を持っているという女性を関わった男の話。その女性は精霊を解き放つことで人を殺すことができると主人公に話すのだが、主人公はその女性にひどい仕打ちをしてしまう。そこから物語がどんな場所に着地するのかと思ったらちょっと予想もつかない部分に着地して、ある意味拍子抜けしてしまったが、これはこれで悪くはないなあと後になって思うようになった。
「迷走のオルネラ」は復讐の話。作中作ならぬ作中漫画、といってもその内容は文字で説明されるのだけれども、作中で語られる物語と、現実において起こる物語の対比が面白い。
「夜行の冬」は異世界へと赴く話で、「夜市」や「風の古道」に近い。ただここでの異世界は元の世界へと戻ることはできず、常に別の世界、いわゆるパラレルワールドを渡り歩く形だ。今よりももっと素晴らしい生活をしている世界があるかもしれないという望みをかけて歩き続けるかそれともある時点で妥協するか、一方で、ただひたすら新たな世界を目指して進み続けるのか。
「鸚鵡幻想曲」と「ゴロンド」はもはやファンタジーといっていい話で「鸚鵡幻想曲」は特に中盤からの展開が予想もつかない展開で、幻想曲という題名がふさわしい話だ。
「ゴロンド」はこの本のタイトル『竜が最後に帰る場所』そのものを指している物語で、恒川光太郎版「愛はさだめ、さだめは死」といってしまうとちょっと言い過ぎかもしれないけれども、作風の広がりを感じさせてくれる物語だった。
コメント