まさかフレドリック・ブラウンの未訳の長編が翻訳されるとは思わなかった。
解説では最後に出たブラウンの新刊はサンリオSFの『フレドリック・ブラウン傑作集』とされているけれども、2009年に福音館書店から『闘技場―フレドリック・ブラウンコレクション』が出ているのでこちらが最後といえば最後だ。もっとも未訳の短編は収録されていないので、除外してもいいかもしれないけれど。しかしそれにしても福音館書店の<ボクラノSF>シリーズは密かに期待をしていたんだが、後が続かなかったね。
内容の方はといえば、いつものブラウンのミステリである。
主人公が新聞記者で、犯人の設定もブラウンのミステリにおける犯人のパターンと同じだ。しかしだからといってつまらないわけではないし、単独でこれ一冊だけ読むとしたら楽しめるだろう。
いつものパターンを踏襲している部分もあれば、いつものパターンには無い新たな展開をさせている部分もある。事件の謎よりは、主人公が不倫してしまったのでこの不倫関係にどういう決着をつけるのかというほうが気になってしまった。
さて、僕はこの本の解説者と同様、フレドリック・ブラウンのファンなので作品の評価は甘めになってしまうけれども、この解説におけるブラウンのノンシリーズミステリ長編の採点は僕よりも甘すぎるよなあと思ってしまう。AからEの五段階評価と言っておきながらD、Eクラスの作品は無いなんて言っているのだ。もちろんそれだけフレドリック・ブラウンが好きなのはわかるんだけれどもね。
まあそれはともかくとして、これでブラウンの未訳長編は一冊だけとなったのだが、嬉しい事に論創社のTwitterによれば、刊行予定だそうだ。無事刊行されればブラウンの長編は全て翻訳されたこととなる。まだ読んでいない『Bガール』も手に入れて読まないといけないなあ。
あと、オビ裏の刊行予定一覧を見ていて驚いたのが、『ロッポンギで殺されて』が刊行予定に上がっていたことだ。たしか都筑道夫のエッセイかなにかでこのシリーズのことを初めて知ったのだけれども、まさか翻訳される日がくるとは思わなかったよ。
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