『マホロミ 3: 時空建築幻視譚』冬目景

  • マホロミ 3: 時空建築幻視譚
  • 著: 冬目 景
  • 販売元/出版社: 小学館
  • 発売日: 2014/2/28

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鶴田謙二の『續 さすらいエマノン』は、物語の中で流れる時間がものすごくゆっくりとした漫画だった。ここまでゆったりしていると物語を楽しむというよりも絵を味わうというほうが正しい読み方なんじゃないかと思ってしまう。
冬目景の描く物語も、他の漫画家の物語と比べるとゆっくりと時間が流れていく。
そしてこの時間の流れ具合が僕にとってはものすごく心地いいのだ。
もちろんそれは、この物語が建物の記憶を幻視するといういうなれば時間を扱った物語であるという理由もあるかもしれない。建物が見たいと望んでいる過去の風景は現在では叶えられない風景でありそれが故に切なさを伴っている。その切なさの中で流れていく時間の速度が心の奥底まで流れ込んでいく。
三巻目ともなると登場人物も揃い始め、微妙な恋関係が構成され始める。そのあたりは『イエスタデイをうたって』における三角関係と同様で、つくづく三角関係の恋模様が好きなんだなあとも思うのだけれど、それ以前にキャラクターの転がし具合がうまいのだ。
それにしても驚いたのが巻末にあるあとがき漫画の内容で、冬目景は登場人物にほくろの設定をしていたことだ。もちろんそれはアシスタントも気づかなくって単なるゴミとして消していたこともあったというくらいで、かくいう僕自身もそんなところにほくろなんかがあったとは気づきもせず、印刷のかすれていどにしか思っていなかったのだ。だって、そのほくろが顔ではなく首筋にあるんだから気づかないよなあ。

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