この本は、新刊一覧のなかで見かけた時にタイトルにある「らいほうさん」という言葉に惹かれるものがあって気になっていた本で、作者の東直子に関しても全く知らなかったので未知の作家による未知の本だったのだが、読んでみるとこれが面白かった。
ネット上で占いをして商売をしている姉、一度結婚したもののわけあって離婚し出戻りとなった妹、最初のうちははっきりとはしないのだが知的障害がある弟の三姉弟の物語、それぞれが交互にそして不規則に視点人物となり物語が進むのだが、彼らが住むのは亡くなった両親が残した分譲マンション。一階にあるので小さな庭が付いているのだがその庭の一角にらいほうさんのいる場所というものが存在し、長女はひたすらそのらいほうさんの場所を守りつづけようとする。が、その場所にはなにかが埋まっているらしい。
世間とのかかわり合いがいびつな彼らの日常はどこか変であり、ホラー小説ではないものの、読んでいるとぞわり来るものがある。長女の行動も含めて、長女のファンだとなるの女性が登場したあたりから、何かが違うという違和感が徐々に立ち上がり、そして徐々に彼らの日常が崩壊していく様子は、この違和感が終盤になって爆発するのかそれともこのまま進むのか、ときおり言葉として出る「らいほうさんの場所を守らない」といけないという言葉が余計に物語の不穏と、らいほうさんの謎に対する不気味さを冗長させていく。
が、しかし、気持ちのいい物語ではないものの、僅かな救いと再生を感じさせるところで終わっているのは悪くはない結末だった。
こんな話を書く人だとは思わなかったよ。
しかし、文庫本のこの表紙はちょっと卑怯な気もする。
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