ブラック・ジャック創作秘話とありながらも描かれているのは『ブラック・ジャック』を描いていた頃の話だけではないので、題名に偽りありなんだけれども、まあそんな重箱の隅を突っつくようなことなどしたくなくなるほど、手塚治虫のエピソードは面白い。
時系列に沿ってエピソードが語られるのではないので、手塚治虫の人生をところどころつまみ食いしながら読んでいるようなものなのだが、関係者のインタビューを踏まえて描かれていく手塚治虫という人物像は、天才というよりも変人でワーカーホリックで大人になりきれていない人物でもある。普通ならばそんな人間とは関わり合いたくないという気持ちが先行するのだがしかし、そんな人物でいても憎みきれないところがあるのは、憎みきれない人物のように描かれているからかもしれないけれども、どんなことでもまず一番に自分自身が行い、最後までそれを全うしつづけて、そして自分自身のわがままで周りを振り回しているかのように見えて、他者に対する気遣いと優しさも持ち合わせているところだろう。
二巻で止まったままになっている皆河有伽の『小説手塚学校』のほうも続きを待ち続けているのだけれども、こっちはどうなっているのだろうか。
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