『悪魔の星』ジェイムズ・ブリッシュ

  • 悪魔の星
  • 訳: James Blish
  • 著: ジェイムズ ブリッシュ
  • 販売元/出版社: 東京創元社
  • 発売日: 1967/07

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読もうと思って買ったものの、そのまま積読状態になってしまっている本も多いけれども、読もうと思いながらも買うところまでいかない本も結構多い。
ヒューゴー賞受賞作のこの本もその一冊で、もっとも僕はかたっぱしから受賞作を読むということもしていないので海外SFを読み始めた初期の頃はヒューゴー賞受賞作であってもそれほど真剣に読もうとも思わなかったのだが、ガイドブック系の本でもそれほどおすすめされていなかったというのが今となっては一番の原因なんじゃないかと思う。
星野之宣の『2001夜物語』の中でこの本のタイトルを使った長めの短編があって、もちろんそれはブリッシュの『悪魔の星』とは無関係の物語なんだけれども、その物語の方ではブリッシュの話よりも単刀直入的というか表面的なキリスト教の知識程度でも理解できる話になっていて、それゆえに面白く、だったらブリッシュの物語も面白いんじゃないかと思い、読んでみようかという気になったけれども、なんだかんだいって今回復刊するまで手に取ることもしなかった。
リチアという惑星に住むリチア人の生体系は面白いのだが、リチア人の思考というのがスタートレックのミスター・スポックを彷彿させるような理知的な生き物で、さらには生態系そのものも面白いのだが、それら全てがキリスト教における教義と対比するような関係に主人公の神父によって結び付けられていくのでそれが面白いと感じるか、退屈と感じるかでこの物語の受け止め方が大きく変わっていくかもしれない。僕はわりあい面白く思ったのだが、その一方でこれだけ面白い設定をしたのならばもう少し幅を広げてくれてもいいんじゃないかという気にもなる。とはいえど、一点集中突破が肝の話でもあるので仕方がないかもしれない。第二部に入るとちょっと焦点がばやけて、第一部ほどの緊迫感に欠けてしまうのが難点だが、星野之宣にコミカライズさせたらスッキリしたんじゃないかという気もする。そしてこの物語の結末は、というかオチと言った方がしっくりするような結末なんだけれども、唖然とさせられた。
しかし、文庫にして270ページ程度、今の基準からすると薄い本なのだが、はっきりいって巻末の中村融の解説が的確すぎて、この解説だけ読めば十分なんじゃないかとも思ってしまう。

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