『ジョーカーゲーム』が有名になったお陰で、世間での柳広司に対する認知度も上がったのだろうけれども、実を言うと僕は『ジョーカーゲーム』があまり好きではなく、二作目までは読んだけれども三作目には手を付けていない。それというのもやっぱりデビュー作のから読んでいるとあまり一般受けしそうもない作風と題材を扱っていた柳広司が一般受けしそうな、それはもちろん版元の売り方というのもあるけれども、『ジョーカーゲーム』のシリーズだけが他の作品とは異なっている印象を受けるからでもある。
後は『ジョーカーゲーム』のシリーズが短編であるというせいも大きい。
やはり僕が柳広司に望むのは長すぎずコンパクトにまとまった長さの長編という分量の中での現実の世界とのからみ合いの中で見せるあざやかな世界の反転という物語だからだ。
そういう意味ではこの『ロマンス』は長編で、歴史上の人物こそは登場しないものの、昭和初期という時代の中で柳広司が描いた文字通りのロマンスは堪能することができた。
もっとも『ジョーカーゲーム』のような要素はまるっきりないので、その延長線上で読もうとするとがっかりするだろうけれど、僕個人は、この路線の柳広司の物語で全く問題ない。
コメント