『電氣人間の虞』詠坂雄二

  • 電氣人の虞
  • 著: 詠坂 雄二
  • 販売元/出版社: 光文社
  • 発売日: 2014/4/10

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光文社文庫から連続刊行された詠坂雄二の三作のうち、ビュー作の『リロ・グラ・シスタ』はまだ未読で、というのも『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』と今回の『電氣人間の虞』だけ読みたかっただけだったんだけれども、それは僕の浅はかさであって、こうなったら詠坂雄二にはとことん付き合っても構わないなという気持ちにさせられたのが『電氣人間の虞』だった。
今回も予備知識なしで望んだのだけれども、物語が始まって早々の展開が前作を読んだ人ならニヤリとさせられる展開で、そしてのその後はというと300ページにみたない分量でありながらも視点人物がわりとこまめに変わるというか視点人物が次々と死んでいくので変わっていくしかないのだけれども、それ故にかこの物語がどういう方向へ進んでいくのか見えない。謎解きのあるミステリを読んでいるはずだという気持ちで望んでいながらも、視点人物が変わっていくのでしかもその誰もが探偵役にはあまりふさわしいキャラクターではないので、読んでいて、これはミステリなのかどうなのか不安になってくる。そしてそうこうしているうちに前作でも登場した詠坂雄二が登場し、謎解きを始める。前作では探偵役とまではいかない人物だったにもかかわらず残りのページ数からすればこれが結論ではないかという結論をだすのだけれども、ではそれが意外性のある真相だというとそれほどでもない。で、その後も少しだけ物語りが続くのだが、本当の衝撃はそこからで、さらにはラストの二行に打ちのめされてしまった。殊能将之の某作品を彷彿させるその二行で、僕はこの物語が好きになってしまったのだ。

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