結局なんだかんだいって、ついつい買ってしまう蘇部健一の新刊。
それというのも表紙の絵がtoi8だったという理由も多分にある。くまおり純の表紙絵の本が僕にとって当たりの確率が高いのと同様、toi8の表紙絵の場合も比較的当たりの確率が高いのだ。
今回は運命という言葉が付いているけれどもタイムトラベルとは無関係な話だったけれども、ミステリ作家だけあって凝った造りの物語だった。
オビに、表紙の絵に対する驚愕の真実なんて煽り文句が書かれていて、物語の最後に一枚の絵を使うあたりがいかにも蘇部健一らしいといえばらしいのだが、驚愕の部分に関してはそれほど期待しないで読むことにした。
運命の出会いをテーマにした短篇集で基本的にどの話も風が吹けば桶屋が儲かる、もしくはわらしべ長者的な展開で、登場人物が起こす行動は何らかの形で他の人物の行動に影響を及ぼし、その結果主役の二人が結ばれるという内容だ。ここまで清々しい甘酸っぱい展開だと逆に微笑ましくなり、読んでいて楽しくもなるし、最終的に全ての話が実はお互いに関連性を持っていたという部分がわかるにいたって、ここまで相互の関係をつなぎまくればしてやったりだよなあとも思う。
で、肝心の最後にわかる衝撃はどうだったのかといえば、最後になってちょっとだけそれまでの話に対してちゃぶ台をひっくり返すような物語になっていて、表紙の絵はそういう意味だったのかということがわかるのだ。これはこれで悪くはない。
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