SFマガジンが700号を迎えるということで前回の600号の時と同様、オールタイム・ベストを募集していたので前回と同様に今回も応募したのだけれども、さんざん悩んだくせに前回の時とそれほど変わらない選択になってしまったのはオールタイム・ベストだから仕方がないなと思っていたんだけれども、日本人作家の短編部門で津原泰水の「五色の舟」を入れなかったのは、というか「五色の舟」をすっかり忘れていたのはちょっと後悔している。この悔しさは次のオールタイム・ベストが行われるかもしれない800号記念の時まで持ち越しするしかない。
すっかり忘れていた「五色の舟」を思い出したのはこの本が出たからだったけれども、あの物語を近藤ようこがどのように漫画に仕上げるのか不安もあった。
というのは僕は近藤ようこの絵があまり好きではないからだ。けっして下手ではないものの、一般的に漫画で絵がうまいというと、整った絵のことを指す場合が多く、そういう点では近藤ようこの絵は整ってはいない。でも、この表紙の絵を見ただけで何故か泣けてくる。もちろんそれは原作を読んでいるからでもあるだろうけれども、表紙を見ただけでも期待感が高まってくるし、気にもなる。
そもそも、文庫で30ページ程度の短編を単行本一冊のボリュームに膨らませるのだから、どこをどのように描き足しているのか気にならないほうがおかしい。
で読んでみると、書き出しこそは原作と異なる書き出しなのだけれども、内容はというと原作にかなり忠実で、さらにはどこを足したのかわからないくらいに足された部分が違和感なく描かれているのに驚いた。
描かれている題材が題材だけにいわゆるフリークスである主人公たちを絵で表現されるとそのインパクトは大きいのだが、近藤ようこの絵柄だからこそ、そのインパクトの質が単なる見世物的なレベルではない、物語としてのインパクトにつながっている。
うまいよねえ、と思うと同時に「五色の舟」は傑作だとあらためて実感した。
コメント
小説書いた方がいいですよ。
僕も書いてます。
g_e_nさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
小説を書くというのはなかなか難しいもので、わたしの場合、時間的な余裕のない今の状況ではちょっと無理そうですね。
それに今の自分が、自分自身で満足できる文章を書くことができるかというとこれもまた難しいです。