『逃避めし』 吉田戦車

  • 逃避めし
  • 著: 吉田 戦車
  • 販売元/出版社: イースト・プレス
  • 発売日: 2011/7/12

Amazon


相変わらず吉田戦車の漫画は読んでいないのだが、こうして吉田戦車のエッセイは読み続けている。
で、今回は『吉田自転車』から始まった一連の<○○車>シリーズでもなく、言葉に関するエッセイでもなく、「めし」だ。しかも、仕事の締め切りからの逃避的行為としての料理である。
振り返ってみると、吉田電車の過去のエッセイの中においても食事に関する言及は少なからずあり、料理というものをエッセイの題材としてもおかしくはない。目次を見ると、多種多様な料理の名前が並んでいる。見覚えのあるものもあれば、いかにも吉田戦車らしいネーミングの料理もある。気になったのはページ数と比較して料理の数が79種とやけに多いことで、一つ一つの料理に対する密度の薄さだ。
まあしかし、そんなことは気にしないように読み進めていくと、言語感覚の鋭さは相変わらずで、読んでいて安心できる上にこちらの想像の斜め上あたりをビシビシと突いてくるので期待値を上げても全然問題ない。どの料理も吉田戦車が締め切りからの逃避行為として作ったと思われる料理で、材料は書かれているけれども分量も調理方法も書かれてはいない。適当に作ってささっと一人で食べておしまいなのだ。
レシピ本としては全く使い物にならない料理本でありながらも、料理なんて適当に本能の赴くままに作って食べればいいんだよという作者の気持ちが伝わってくるかと思いきや、そんなことはなく、最低限の料理の腕は必用で、自分の食べるものぐらい自分で作れるようになっておいたほうがいいというかそういう人間になっておいたほうが楽しみが増えていいよなあと思わせる本だった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました