米澤穂信によるアンソロジーということでさぞかしミステリマニアっぽいセレクトだと思ったら桜庭一樹が編んだと言っても不思議に思わないひねくれたアンソロジーだった。
まず目次をみて『星雲組曲』の張系国の作品が収録されているところで思わずうれしくなるというか、いきなり不意打ちを食らった状態であったけれども、このアンソロジーのセレクトを見ると、米澤穂信が時として正統派のミステリ以外の要素を含んだ物語を書くのも納得できる気がした。
『世界堂書店』と名付けられているだけあって、収録作品も世界中の作品をターゲットにして一つの国に偏らないようにばらけているし、ミステリらしいミステリが全く入っていないのが楽しい。もちろん謎解き要素がまったくないわけではなく、広義のミステリに含まれる作品は存在している。そして内容的にも不思議な話もあれば後味の悪い話もあるしそうかと思えば意外と後味の良い良い話もかなり入っている。
そんなわけで、ちょっと完成度が高過ぎるというか出来過ぎなんじゃないかと思ったりもするけれども、ベン・ヘクト「十五人の殺人者たち」とパノス・カルネジス「石の葬式」に出会えたのは良かったと思う。
こういうアンソロジーを読むと自分でも似たようなテーマで編んでみたくなる。
H・V・クライスト、トーベ・ヤンソン、大泉黒石、オラシオ・キローガ、トム・ジョーンズ、残雪あたりは入れてみたいなあ。
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