前巻が出てから思いの外、早く出た気がする。それというのもその前に『マホロミ』の三巻が出たせいもあるし、実際に一年も立たないうちにこの巻が出たわけで、確かに早い。
八巻が出た時には二年に一冊くらいのペースでも構わないなんて書いたけれども、嬉しい半面、ちょっと心配にもなってくる。
巻末でハルが「10」と言いながらはしゃいでいる絵が三ページにわたって描かれているのだが、その後の作者の言葉によれば、十巻という長さは冬目景の最長不倒距離でもあるらしく、とくに二桁というのはやっぱり作者にとっても感慨深いものがあるらしい。しかしその一方で、出るのが遅すぎるという読者の意見が作者に届いているらしく、もうしばらくのお付き合い、などと書かれてあってもちろんつきあうけれども、これって、もうじきこの物語も終わりになるって意味だよね。もちろん、いつかは物語は終わるものだし、同じ作者の『黒鉄』のように中断したまま始まる気配すらないのも困りものなんだけれども、終わりが見え始めるというのは寂しいものがある。
たしかに、物語としては入り組んだ人間模様というか、六人の男女の、それぞれが好きな相手が相互に少しづつずれているが故にもどかしい状況は、そのズレが解消されればすべてまるく収まる状況でもあるので、そろそろ終わりが近づいているのかなとも思っていたけれど、この心地よい時間と空間は二年に一遍くらいのペースで楽しみたいと思う贅沢な楽しみでもあったのだ。
まあ、完結しても、もう一度一巻から読み直すという楽しみも残っているのだが。
ところで、早川浪が観ていた映画はジュリアン・ムーアが出ていて、オチが宇宙人ってことは『フォーガットン』だよね。ネタバレしてしまっていいのかという気もするけれど、あのオチを許せる人は真相を知った上で見ても楽しめるし、許せない人も真相を知った上で見ればそれなりに楽しめるだろうからまあいいのだろうね。
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