『満願』 米澤穂信

  • 満願
  • 著: 米澤 穂信
  • 販売元/出版社: 新潮社
  • 発売日: 2014/3/20

Amazon


読み始めて驚いたのは米澤穂信ってこんな雰囲気の文体だったのかということで、以前の作品とはちょっと雰囲気が変わっている。といっても今まで僕がそのことに気が付かなかっただけなのかもしれないが、文章も含めて久しぶりに堪能することの出来た一冊だった。
全六編の短篇集で、それぞれに趣向が凝らしてあり、全体的には後味の良くない話が多いのだが、後味の悪さに反比例してミステリとしての満足度はとても高い。
じっくりと丁寧に物語りが語られ、その中でこれまた丁寧に伏線が貼られていくので結末の予想、もしくは事件の真相に途中で気が付きやすい話もあるのだが、語られる物語の苦さというかゾワリとくる感覚を味わいながら読み進めていく行為はなかなか得がたい行為でもある。
一番はやはり表題作の「満願」で、次第にあきらかになる謎の焦点とその謎に対する意外な真相はチェスタトン風の逆説でもあり、同様なことは「夜警」にも言える。
その一方で、「関守」のようなホラー的な話があったり、題名からして都筑道夫っぽい雰囲気を感じた「死人宿」における皮肉な結末も捨てがたい。内容は都筑道夫ではなかったけれども。

コメント

  1. higa より:

    安心して読める作家さんの一人ですね 古典部シリーズは 腹を抱えて笑った思い出がありますね。アニメはまだ見てないんだけど・・・・。ボトルネックを読んだ時は 同じ著者だったとは思えませんでしたね。

  2. Takeman より:

    古典部シリーズは人が死なないだけあってまだ明るい話になっているんですが、その制約が外れだすと、わりと後味の悪い話を書く人ですね。
    安心して読むことができる作家というのは同感です。

タイトルとURLをコピーしました