仕事中、妻から電話がかかってきた。
相手先が妻だとわかった瞬間に要件もわかった。
義理の父が亡くなったのだ。
先週半ば頃に様態が悪化し、救急車で運ばれ即入院となった。肺炎も併発していた。
酸素吸入と点滴、手を握れば握り返してくるけれども目は開かない。
食事を取ることができるくらいに回復すればいいのだが、どうなるのかはわからない状態だ。
一昨日になって目が開き、なにか喋るようになったと聞いていたので持ちなおすかと思ったが、ロウソクの消える間際の輝きだったようだ。
恐れていたことがとうとう起こってしまった。
義父が亡くなることは、歳も歳だし、脳梗塞と脳内出血を併発してずっと介護状態だったから仕方がない。
妻は娘として義父の葬式に出なければならない。はたして、大丈夫なのだろうか。
妻は、自身の身内に、特に自分がまだ元気だったころの自分のことを知っている人に合うことを恐れている。
自分の父親が亡くなったのだからどんな顔をしていても、悲しんでいるんだと受け止めてくれるから大丈夫だよと、言い聞かすのだが、
「私が会いたくないの」
の一点張りだ。
精神障害者としての目で見られるかもしれないという妻の気持ちは、実際にどう思われるのかではなく、そう見られるかもしれないという恐れのほうが大きい。
かといって、葬儀には出たいという気持ちもあり、その板挟みで葛藤している。
妻の家族の葬儀となると妻の夫という立場では手助けにも限界がある。
義父の様態が悪化していらいずっとこのことばかりが気がかりで、かといって良い方法も見つからない。
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