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- 『スターダストメモリーズ』星野之宣
星野之宣ならば『2001夜物語』全2巻を選びたいところだが、あえてこちらの方を選んでみた。
『2001夜物語』は終盤の展開が駆け足的になってしまい、それまでのゆったりとした壮大な雰囲気とは違ってしまったのが難点と、基本的に相互につながりのない短編ではあるものの、いくつかの話では共通の人物が登場したり、もちろんバックボーンとなる世界の設定は共通のものであるので、そういった設定がバラバラなSF短篇集というわけれはなく、宇宙に進出した人類の行末を描いた未来史でもあるせいもあってSFが好きな人であれば楽しむことができるだろうけれども、あまり好きでない人にとっては全2巻のこのボリュームを読むのはちょっとつらいかもしれない。
それに比べると1巻で終わっているこの『スターダストメモリーズ』はポスト『2001夜物語』といっても構わない内容でありなおかつ純粋な短篇集なので気軽に読むことができる。
中でも「セス・アイボリーの21日」は傑作。
主人公セス・アイボリーは、とある惑星で遭難してしまう。そくざに救難信号を発信し救助隊に助けを求めるのだが、助けが来るまで21日間かかってしまう。もちろんそれだけだったらよかったのだが致命的までに問題だったのはこの惑星の特異な現象で、1日で5年分の老化が進んでしまうのである。延命手段の発達した未来ではあるが最大限に延命処置をしたとしても12日目で彼女は老衰で死んでしまう。そこで主人公は自分のクローンを作ることを考える。自分が死んでも自分のクローンは救助されるはずだ。
だが最初のクローンは救助される前に老衰で死ぬ運命にある。実際に助けられるのは二代目のクローンなのだ。最初のクローンの人生は、自分のクローンを作り出し、救助させるためだけの人生なのである。
では、最初のクローンは捨て駒としての人生なのだろうか。この物語の本当の凄さは、彼女の約1800倍の長さの時間を生きている僕達も実は彼女と変わらないということを理解させてくれるところにある。
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