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- 『五色の舟』津原泰水(作)、近藤ようこ(絵)
原作小説と漫画の良き融合というか理想的なコミカライズの一つの形がこの一冊。
一般的に漫画で絵がうまいというと、整った絵のことを指す場合が多く、そういう点では近藤ようこの絵は整ってはいない。でも、この表紙の絵を見ただけで何故か泣けてくる。もちろんそれは原作を読んでいるからでもあるだろうけれども、表紙を見ただけでも期待感が高まってくるし、気にもなる。うまい絵だ。
そもそも、文庫で30ページ程度の短編を単行本一冊のボリュームに膨らませるのだから、どこをどのように描き足しているのか気にならないほうがおかしい。
で読んでみると、書き出しこそは原作と異なる書き出しなのだけれども、内容はというと原作にかなり忠実で、さらにはどこを足したのかわからないくらいに足された部分が違和感なく描かれているのに驚いた。
描かれている題材が題材だけにいわゆるフリークスである主人公たちを絵で表現されるとそのインパクトは大きいのだが、近藤ようこの絵柄だからこそ、そのインパクトの質が単なる見世物的なレベルではない、純粋な物語としてのインパクトの大きさにつながっている。
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