週刊 5巻以内で完結する傑作漫画99冊+α 12/99

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  1. 『スーパーマン:レッド・サン』マーク・ミラー(作)、デイブ・ジョンソン(絵)
    日本の漫画ばかりでは片手落ちなので、海外の漫画からも選んでみよう。といってもそれほど多くの作品を読んでいるわけではないので、海外の漫画のごく一部ということになってしまう。
    海外の漫画といえばまずはアメコミだ。で、アメコミといえばスーパーマン、バットマン、スパイダーマンの三人が日本ではベスト・スリーだと言い切っても間違いはあるまい。
    とはいえど、この人気のヒーローが活躍する漫画から何を選ぶのがいいのかというと圧倒的に読書量の少ない身としては困ってしまう。なのでちょっと変則的な作品を選んでみることにした。
    『スーパーマン:レッド・サン』はスーパーマンがアメリカで育ったのではなくロシアで育ったとしたらというIFの物語だ。
    スーパーマンは赤ん坊の頃に地球にやってきた宇宙人である。
    もし、スーパーマンが乗ったカプセルがアメリカのカンザス州に着陸しなかったとしたらどうなっていただろうか。地球にたどり着くのが12時間ほど遅れるか、進んでいたとしたらスーパーマンの乗ったカプセルはアメリカではなくロシアのどこかに着陸し、ロシア人に育てられたかもしれない。
    この漫画は、スーパーマンがロシアで育ちロシア人として成長したらどのような物語になっていっただろうかということを描いた漫画だ。
    この漫画ではスーパーマンの幼少期は描かれないので、スーパーマンがどのような教育を受け、どのように成長したのかは不明なのだが、この漫画におけるスーパーマンは共産主義者でありながらも資本主義を敵とみなすわけでもなく、困っている人がいればその困っている人がどこの誰でも助けようとする。
    その点で、ロシア人として育ったスーパーマンであってもアメリカで育った本来のスーパーマンと根底の部分では同じであり、根底が同じでありながらも育った環境によってここまで異なる行動をすることになるというシミュレーション的な要素も存在する。
    他のアメコミと同じくページ数はそれほど多くは無いのだけれども、物語の密度が濃く、スーパーマンとその敵であるレックス・ルーサーだけではなく、バットマンやワンダーウーマン、グリーン・ランタンも登場する。中でも、この漫画におけるバットマンの立ち位置が面白く、バットマンはスーパーマンの築いたある種のユートピア国家に対して反体制的な立場に立つ。
    何が正義なのかという問題と、より良い世界にしようとする自分の行為が人々に受け入れられないという問題、そして結果として、恐るべき超人的な能力を持ちながらも、傍観者として見守り続ける道を選ぶしかなかったという結末は、スーパーマンに影響を与えたと言われているフィリップ・ワイリーの『闘士』と同じ物語になったという点で興味深い。

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