記事タイトルにひかれて初めてこのページをご覧になった方は、こちらを最初に御覧ください。
- 『少女・ネム』カリブ・マーレィ(作)、木崎ひろすけ(絵)
五巻以内で完結している漫画というくくりなのに完結していない漫画を選ぶのもどうかとも思うのだが、物語の終わりというのはいったいなんなんだろうとも思うことがある。作者が描きたいと思ったところまで描かれた時点でその物語が終わるのが理想的な終わりであることは確かなんだけれども、作品は作者一人の物でもない場合が多い。作者はここまでで十分だと思っても、読者は満足しない場合もあるし、商業出版の場合は途中で打ち切りや、引き伸ばしということも行われる。しかし、どんな形であっても最後の1ページにいたるまでの部分が面白ければ、物語として途中で終わってしまっていたとしても構わないんじゃないかと思う。というわけで、未完だけれども文庫で全3巻、最後の1ページまで面白い、山田芳裕の『度胸星』全3巻を挙げようと考えていたのだが、連載打ち切りとなったとはいえ、ひょっとしたらこの続きが描かれる可能性はゼロではないので、断念した。いっぽうで、木崎ひろすけの『少女・ネム』の場合、作者が既に亡くなっているのでこの物語の続きが描かれることはない。
スクリーントーンを使わず、アシスタントも使わず、ホワイトによる修正の後すら無かったという原稿。
登場人物は見た目は猫を擬人化したキャラクターとして描かれているが、特にそれが物語上で何らかの意味を持っているものではない。おそらく描く題材が自分に近すぎる題材だったから、人として描くのではなく擬人化した猫として描いていたのかもしれない。漫画を描くことの好きな内気な少女ネムがかつては漫画家でありながらも途中で挫折してしまった青年と出会うことによって漫画家を目指していくという物語は、やがて主人公が青年に恋していくという過程や、青年が主人公の才能に劣等感を感じて主人公のもとを去っていくという流れといい、物語そのものはそれほど目新しいものではないが、そもそも物語はようやく動き出したというところで中断してしまっているので物語そのものに対しては評価のしようもない面もある。しかし、物語はそこで中断してしまっていても、そこに描かれている木崎ひろすけのそっと触れなければ壊れてしまうような繊細な世界は依然としてそこに存在し続けている。原作者のほうはまだ存命でいまも精力的に活躍中ではあるが、この物語の続きが別の描き手によって描かれたとしてもそれはこの作品とはまったく別の作品だ。
そう言い切ってしまってもいいほど木崎ひろすけの絵は唯一無二の絵なのである。
原作者カリブ・マーレィは狩撫麻礼の別ネーム。狩撫麻礼がこの名義で発表した作品はおそらくはこの一冊。
コメント
度胸星、茶々がテセラックの謎を解いてくれると期待して、続編をひたすら待ち続けます( ˘ω˘)
万が一続きが描かれることがあったとしても、それが必ずしも傑作になるとは限りませんから、未完は未完のままであることを含めて楽しむのがいいのではないかと思います。