LPレコードとハイレゾ

我が家には50枚ほどのLPレコードがある。
若いころ、というよりもLPレコードが全盛期だったころ集めていたものをいまでも捨てずに残してあるからだ。
僕は良い音で聞きたいという欲望があまりなかったので、LPレコードからCDに切り替わり始めたころでも、LPレコードを買っていた。アナログのレコードはどうしてもカートリッジやターンテーブルといったプレーヤーによって音質が左右されてしまうもので、それに比べるとCDの場合はそこまでプレーヤーによって左右されることが少なく、同じ値段で再生装置を揃えた場合、CDの方が安価で良い音が出る。もっとも、単にものぐさでCDプレイヤーを買わなかっただけというせいもあるが。
しかし、当時は音楽そのものもそうだけれど、LPレコードのジャケットの存在も音楽を聞くという行為の一つを占めていたので、味気ない画一的なCDのケースに入れられたCDを買うよりもLPレコードの方が好きだったのだ。
と書いておきながら、あらためてLPレコードのジャケットを見なおしてみると、写真や絵が印刷された単なるボール紙に過ぎずCDケースと比べれば、大きいだけあってインパクトはあるけれども、例えば、Mr. Misterの『Welcome to the Real World』などはあらためてじっくり見てみると、印刷状態もそれほどいいものでもなく、むしろCDケースサイズに縮小されていたほうが綺麗にみえたりする。
もちろん、エンボス加工されたり一部分だけつや消し処理がされたりと、手の込んだ作りのジャケットも存在する。なので、あまりジャケットにお金をかけることのできなかったアルバムはCDの方が見栄えがするという点でいえば、CD化するということは、良い物でも駄目なものでもそれなりにという、均一化に向かっていったともいえるのかもしれない。
それはともかくとして、時代の流れには逆らうことなどできるはずもなく、LPレコードは作られなくなり必然的にCDで買うしかなくなってしまったのだが、ハイレゾ音源が注目をあびるようになってから、LPレコードも少し巻き返しをはかってきたようだ。
CDの場合はデータ的にハイレゾ音源としての部分がカットされているので再生しようにも物理的に出来ない。それに対して昔のLPレコードはその部分がカットされていないので、再生のための機材は必要となるけれども、それほど高価な機材を揃えることなしにハイレゾ音源を再生することができる。
もちろん、老化しつつある僕の耳でハイレゾ音源の聞き分けができるのかといえば甚だ疑問だが、そもそもアナログレコードで音楽を聞くということはカートリッジとターンテーブルの組み合わせによって変調された音を楽しむという行為であってそれを思えば、ハイレゾ音源を楽しむのではなく、LPレコードで音を楽しむということを老後の楽しみのひとつにとっておいてもいいかなと思うのだ。
いや、老後までとっておかなくてもいいのだけれども。

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