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- 『石の花(上)』坂口尚
- 『石の花(下)』坂口尚
- 『石の花(中)』坂口尚
第二次世界大戦中、ドイツのナチスによって制圧されたユーゴスラビアを舞台とした物語。
そんな時代のそんな世界の話なんて知識が無いから読んでもつまらないよ。と思う人はまずは騙されたと思って読んでみて欲しい。
坂口尚はそんな時代のそんな世界をあるがままの世界を描ききっている。だからこの漫画を読むのに予備知識など必用はない。
あるがままといっても作中では正義と悪について等、肯定するべきことは肯定しているし、否定するべきことは否定している。しかしそれはあくまで登場人物にそうさせているのであって、作者が表に出てそう言っているわけではない。
作者の主義主張は確かにそこにあるのだけれども、それは物語の中では目に見える形では現れていない。ナチスによって占領された世界、の善悪の二元論で語られそうな物語を単純な二元論でもって描いているのではないのだ。ごく普通の人々が歴史の大きなうねりの中に巻き込まれていった時、後世の人達から見れば、何故このような愚かなことをしたのだろうと思われることであっても、小さな積み重ねがそのようなことに結びついていき、気がつけばもう抜け出せないところまで来てしまっていくのである。
オリジナルは全3巻だったが後に大幅加筆された5巻構成の本が出た。さらにその後、全3巻にまとめられた豪華版がでている。
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