冬目景の『イエスタディをうたって』がとうとう完結した。
連載開始から18年である。
沙村広明の『無限の住人』もだいたい同じ位の期間、連載を続けていたのだが『無限の住人』は30巻で『イエスタディをうたって』は11巻と、かなりの差がある。それにしても『無限の住人』はついこの間、完結したと思っていたけれども2012年のことだったので少し驚いたが、『イエスタディをうたって』は長編のストーリー漫画でありながら、一つのエピソードがだいたい5話くらいで、エピソードが完結するとしばらくのあいだ中断するという体裁をとっていたのでこれだけの長い間書き続けていながらも11冊しか出ていない。
ファンとしてはあまり間が開かずに継続して読みたいという思いはあるけれども、この漫画の場合は読んでいると次第にそういう気持ちが薄れてくる。
8巻が出た時にこんなことをブログで書いた。
13年も経ってまだ8巻しか出ていなく、なおかつまだ物語は終わっていない。
現実の時間の流れと比べて恐ろしくゆっくりと流れていくこの物語の世界を、このまま永遠に読み続けていきたいという気持ちもあるのである。
主人公、魚住陸生と野中晴、そして森ノ目榀子の三角関係の恋愛物語は他に三人の男女を巻き込んで六人がそれぞれボタンの掛け違いのような関係になっていったのだが、それ故にどこかでこのボタンの掛け違えが修復されればハッピーエンドになるということを予感させる構造であり、最終巻はこの予感どおり、掛け違えもしくは勘違いの恋愛感情は解きほぐれていった。もっとも、すべての人が幸せになったのではなく、叶わぬ恋となった人物もいたのだが、そういう切なさもあるからこと余韻の残す結末となったといえるだろう。
それにしても18年という歳月は振り返ってみると長い時間だったと思う。連載が始まった時点で僕はすでに登場人物よりも歳をとっていたけれども、今では登場人物の親といっても構わないような年齢になってしまった。ずいぶんと時間の流れのゆっくりとした世界である。
さて、今しばらくは物語の余韻にひたり、そしてその余韻が薄れてきた頃にもう一度1巻から読みなおしてみよう。
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